安東は韓国の古い暮らしが残る伝統文化の町
韓国旅行というと、まずソウルや釜山を思い浮かべる方が多いかもしれません。買い物、カフェ、グルメ、街歩きの楽しさでいえば、ソウルや釜山はたしかに便利です。ただ、韓国の歴史や昔ながらの暮らしに触れてみたい方にとって、慶尚北道の安東はとても見ごたえのある町です。
安東市は、韓国中部からやや南東側に位置する内陸の都市です。高層ビルや大型商業施設を見に行く場所というより、古い村々、伝統家屋、儒教文化、仮面舞、郷土料理を通して、韓国の地方文化を落ち着いて見ていく旅先だといえます。日本からの旅行者にはまだあまり知られていませんが、韓国国内では「伝統文化の町」としてよく知られています。
2026年5月には、高市首相が韓国訪問時に安東を訪れる可能性が報じられたことで、日本でも「安東とはどんな場所なのか」と関心が高まりやすい状況になっています。政治のニュースで名前を聞いたとしても、実際に安東を知ってみると、会談の場所というだけでなく、韓国旅行の目的地としても十分に魅力のある町だとわかることでしょう。
安東観光のよさは、名所が単独で点在しているだけではなく、町全体に「韓国の古い文化を見に行く」という雰囲気があり、韓国のなかでも特にノスタルジーな気分にさせてくれるところです。世界遺産の河回村、屏山書院、仮面文化、安東チムタクなど、観光やグルメでも楽しみが多い観光地です。

安東河回村は必ず訪れたい
安東観光で最初に名前が挙がる場所が、安東河回村です。河回村は、昔ながらの韓屋が残る民俗村で、2010年に「韓国の歴史的村落:河回と良洞」としてユネスコ世界遺産に登録されました。安東を代表する観光地として河回村はマストビジットです。
河回村の特徴は、ただ古い家が並んでいるだけではないことです。村の周囲を洛東江が大きく包むように流れ、周辺には山や畑も広がっていて情緒あふれる環境にあります。家並み、路地、川、山が1つの景色としてまとまっているため、歩いているだけでタイムスリップした気分にさせてくれます。
村の中では、瓦屋根の家、藁ぶき屋根の家、土塀の道などを見ながら散策できます。派手な観光施設ではありませんが、韓国の古い村の形が残っているため、ソウルの宮殿観光とはまた違った見え方があります。河回村は地方の暮らしや家のつくりを、ゆっくり散策しながら見るのにふさわしい場所です。

河回村を訪れるなら、村の中を歩くだけでなく、芙蓉台から村を見下ろす景色もぜひ見ておきたいところです。芙蓉台は、河回村の全体を眺められる場所として知られていて、専用車やタクシーの場合は必ず寄ってもらいましょう。上から見ると、川が村を囲む地形がよくわかり、なぜこの村が特別な景観として評価されているのかよくわかります。
また、河回村周辺では仮面文化にも触れられます。河回別神グッ仮面劇は、安東を代表する伝統芸能としてよく知られ、河回世界仮面博物館では韓国の仮面だけでなく、世界各地の仮面文化を見ることができとてもユニークです。観光としては、村内の散策、芙蓉台、仮面博物館を合わせて回るのが理想です。

屏山書院と安東チムタクで旅の印象が深くなる
安東の見どころは河回村だけではありません。河回村とあわせて訪れたい場所が、屏山書院です。屏山書院は、韓国の儒教文化を知るうえで重要な場所で、ユネスコ世界遺産「韓国の書院」の1つとしても紹介されています。韓国の書院は、学問を学び、先人をまつる場所として発展してきました。
屏山書院の魅力は、建物の雰囲気と周囲の景色が落ち着いていることです。安東の中心部からは離れますが、建物の配置や庭、周辺の山並みを見ながら、ゆっくり歩くのに向いています。韓国の歴史に詳しくなくても、当時の人々が学びの場をなぜこのような場所につくったのかを、目で見て感じられます。
安東観光では、歴史だけでなくグルメも忘れてはいけません。代表的な料理が安東チムタクです。鶏肉、春雨、野菜などを甘辛い醤油味で煮込んだ料理で、日本人にも食べやすい味です。辛さは店によって差がありますが、濃いめの味付けでご飯ともよく合います。安東旧市場周辺には安東チムタクの店が集まるエリアがあり、観光途中の昼食や夕食に組み込みやすい料理です。

韓国旅行では、ソウルで流行の料理を食べる楽しみもありますが、地方都市ではその土地の名物料理を食べることで、旅の印象が残りやすくなります。安東の場合は、河回村や屏山書院で伝統文化を見て、そのあとに安東チムタクを食べるというのが定番です。安東に観光で訪れたら忘れずに食べていきましょう。
それから、安東といえば、焼酎の産地です。安東焼酎もおみやげにどうぞ。
このほか、晩休亭のように韓国ドラマのロケ地として知られる場所もあります。韓国の古い建物や静かな風景が好きな方なら、河回村だけで終わらせず、周辺の見どころを組み合わせることで、安東観光の満足度は変わってくるでしょう。

ソウルから足を延ばすなら1泊2日がベスト
安東市は、ソウルから日帰りできない場所ではありません。ただ、初めて訪れるなら、1泊2日で組んだ方が行程が無理のない旅になります。河回村、芙蓉台、河回世界仮面博物館、屏山書院、安東チムタクをきちんと回ろうとすると、移動時間も含めて1日では足りない感じになります。
日帰りで行く場合、見どころを河回村中心に絞ることになります。朝にソウルを出発し、昼前後に安東へ入り、河回村を歩いて、夕方に戻るような形です。ただし、この回り方だと屏山書院や食事の時間をゆっくり取れないことがあります。安東らしさをしっかり感じたい方には、現地で1泊する行程のほうが合っています。
1泊2日なら、1日目に安東へ移動して安東チムタクを食べ、町の中心部や月映橋周辺を歩き、2日目に河回村、芙蓉台、屏山書院を回るような流れも良いでしょう。月映橋は安東の夜景スポットとして知られており、昼の河回村とは違う雰囲気を楽しめます。時間的に都合があえば、地方都市で1泊するのもまた違った旅路になることでしょう。
安東は、韓国旅行に何度か行ったことがある方に特に向いています。初めての韓国旅行ならソウル中心が便利ですが、2回目、3回目の韓国旅行で「次は地方にも行ってみたい」と思ったとき、安東観光も選択肢の1つに入ってくるでしょう。世界遺産がいくつもあり、郷土料理があり、韓国らしい伝統文化が散らばっているため、きっとご旅行に華を添えてくれると思います。

高市首相の訪問報道をきっかけに、安東という地名を初めて知る方も多いかもしれません。しかし、安東は一時的な話題だけで見るにはもったいない町です。韓国の古い村を歩き、屏山書院で静かな建築を見て、安東チムタクを食べる。そうした1つ1つの体験が、ソウルや釜山とは違う韓国旅行の記憶になります。
安東への旅は、韓国の精神文化の真髄に触れ、歴史と伝統文化を知るのにふさわしい旅路です。少し不便な立地ではありますが、機会があればぜひ訪れてみてくださいね。

